i'mperfect

行き場のない煌き達よ

 家に引きこもる時間が長くなって久しい。運動不足や閉塞感を解消するために出来るだけ家の周りを散歩するようにしているが、それにしても外出の機会が減った。iPhoneのヘルスケアアプリが記録している一日の歩数も以前の三分の一程度になった。

 そのせいだろうか、外に出た時にいつもよりたくさんのことに気付かされる。

 地面の感触、空気の匂い、車の騒音、今までは気にも留めなかったことが今更新鮮に感じられる。いわゆる「エモい」気持ちになる。四年間住んでいた街を歩いているだけなのに、まるで故郷の町に帰ったような、そんな気持ちになる。たった二ヶ月引きこもっていただけなのに、当たり前に外に居たことなんてもう遠い昔の思い出のような。

 私たちのかつての生活様式はきっともう既に「過去」のものとなってしまったのかもしれない。災厄が去ってもそれは取り戻されず、きっと今までと遠からず近からずな新しい生活が浸透するのだろう。その時になって、私たちはかつての生活がどうであったか、正しく想起することが出来るのだろうか、それともそんなことはすぐに忘れて新しい生活がまるで遥か昔からそうであったかのように適応して生活をするのか、昼間からカーテンを締め切りエアコンを付けた部屋でそんなことを考えながら今日もキーボードを叩く。